晴れた日に散歩に出かけるととても気持ちがいいですよね。
私も今日は電車に乗るために最寄りの駅まで歩きましたが、ただ歩いているだけなのに気分が高揚してきます!
ちょっと早めに駅についたので、ホームからいつもの電車が来るのを眺めていると、ふと線路に目線が落ち、
「線路の下に石がいっぱい積み上げられているけれど、これはなぜだろうか?」
と思いました。
こんなやつですね。
ぱっと見、石がずれると線路もずれてしまいそうなので、しっかり地面に固定したほうがいいように思いますが、、いったいどうなのでしょうか?
今日はこの線路の下に置かれている石は一体何なのか?そして石が敷き詰められている理由について詳しく調べてみたので、その内容をご紹介しようと思います。
なぜ線路に石が敷き詰められているの?
まず、この石は業界用語で “バラスト” と呼ばれるもので、この石を下に敷き詰めた形の線路を “バラスト軌道” と言います。
なので、今後はこの石のことをバラストと呼びますね^^
それではさっそく、なぜ線路の下にバラストがぎっしり敷かれているのか、という疑問に答えていきたいと思います。
その主な理由は以下の4つです。
- 電車への振動を小さくするクッションの役割をする
- 周囲や電車内への騒音が軽減される
- 線路の水はけが良くなる
- コストが安い
それぞれどういうことなのか、わかりやすく解説しますね。
1.電車への振動を小さくするクッションの役割をする
線路の下が石だらけだと、どうも振動が大きくなりそうに思われますよね。
しかし、実は適度な大きさや硬さの石を敷き詰めることで、電車の走行に耐えられる強度と振動を軽減することができるのです。
バラストに使われる石は規格が決まっており、以下のように選ばれ、加工されます。
-
石の種類:主に花崗岩・けい岩・安山岩が使われる
-
ほとんどが山や川にある天然の石
- 15-70mm程度に破砕して使用する
花崗岩やけい岩、安山岩は堅く靭性に富んでいて、かつ安価ということでバラストに採用されているようです。
それを均等な大きさに壊して敷き詰めて使っているわけですね。
2.周囲や電車内の騒音が軽減される
これも線路の下に石がたくさんあると、騒音がうるさくなりそうなのですが、逆なんですね。
細かい石たちが電車の走行音を打ち消して、騒音を小さくしてくれているのです。
逆に、石がないと(例えば線路の下がコンクリート)騒音がそのまま反射し、また共鳴現象などで音が増幅され車内も周りもとてもうるさくなってしまいます。
※都心部ではこれが原因の騒音問題が根強く残っています。
3.線路の水はけが良くなる
これはなんとなくイメージできるのではないでしょうか。
雨が降っても、水が石の間から下へ下へと流れていくので水が貯まらず、線路の劣化防止になります。
枕木(線路の下に垂直に等間隔で敷かれている木材)の腐食も起こしにくくなるので、まさに線路の長寿の要ですね。
4.コストが安い
1.でも紹介しましたが、バラストには花崗岩、けい岩、安山岩など、比較的手に入りやすい石材を使っています。
これを粉砕して敷き詰めるだけなので、全面コンクリートで線路を作成するより非常に安価になります。
だからこそ、日本各地でこのバラスト軌道が普及したのですね。(田舎の路線はほとんどこれですもんね^^)
いつから線路に石を置くようになったのか?
色んな面でメリットが大きいバラスト軌道ですが、この方法はいつから使われるようになったのでしょうか?
初めてバラストが使われたのはイギリスだと言われています。
産業革命時、イギリスのニューカッスルという港町から当時の主力燃料である石炭を詰んだ船がたくさん出港していました。
石炭を運び終えた船はニューカッスルに戻るのですが、帰りは石炭がないため船の浮力が強くなってしまいます。
そのため、重りとして石を積んで戻って来ました。
その石を有効活用するために考え出されたのが、線路の下に敷いて緩衝材とするバラスト軌道だと言われています。
そんな思いつきで行ったような政策が、未だに現役で使われている事には驚きですよね!
かつてのイギリス人のリサイクル精神には脱帽です。
線路の下に石を敷くバラスト軌道が最善の線路なの?
これまでに、バラスト軌道は素晴らしく理にかなった線路であることと、その理由をたくさん紹介してきました。
じゃあ、バラスト軌道が最高の線路の形なのか?と言われるとそんなこともないのです。
バラスト軌道は確かに素晴らしい線路ですが、デメリットも、もちろんあります。
- 高速走行になると強度不足
- 保守、点検、管理に時間とお金がかかる
- 積雪の多い地域ではバラストがはねて窓ガラスを割る事がある
- 大量の雪解け水により、線路が緩む
これらは、石を積むバラスト軌道の短所です。
1.の問題により、新幹線などの高速走行する車両には向かないです。
石を積み上げているので、コンクリートで固めた線路(スラブ軌道)に比べて、崩れだり歪んだりし易く、その都度修正しなければなりません。
また3.4の問題も雪国ならではではありますが、深刻な問題です。
「なんだ!問題点も多くて、全然ダメじゃん!」
とは思わないくださいね。
なんと既に、JRではバラスト軌道とコンクリートの線路(スラブ軌道)のいいところをかけ合わせた ”弾性バラスト軌道” という線路を開発し、実際に設置されている路線もあります。
この線路は
- バラスト軌道と同等の耐騒音、耐振動性能があり
- 線路がズレにくいので保守コストも低く
- 設置のコストはコンクリートの線路(スラブ軌道)の3割減
という、まさにいいとこ取りの線路です。
今後新しく作られる線路や改修される線路は、この弾性バラスト軌道に置き換わっていくことになるでしょうね。
いかがでしたでしょうか。
線路の下に敷かれている石っころにこんな重要な役割があるなんて、結構な驚きですよね。
先代の先輩方の知恵には、本当脱帽ですよ〜
今後は弾性バラスト軌道の線路が増えてくると思うので、バラスト軌道の線路は少しずつ減ってくると思いますが、
私は石が積まれている線路の光景はとても好きなので、少しで良いのでそんな昔なつかしい線路も残しておいてほしいものです(^^)
コメント